2012年10月10日

パリ初日/前編

9月11日(月)
この日はいよいよパリへ移動する。
アヴィニョン最後の朝食は、ホテルのレストランでいただいた。
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IMG_1636ECHIREのバターが嬉しい
中庭なので、ハトも自由にやってくる。
フランスで犬の地位が高いのは有名だが、犬以外の動物も高く感じる。
動物も人間も同じ「生き物」。
アイルランドでもそうだったが、そういった意識を動物たちの方が強く持っているように感じた
日頃触れ合っている人間が優しいからかなぁ?

IMG_1649ホテルからアヴィニョンTGV駅への移動は、ホテルにお願いしてタクシーを呼んでもらった。とても感じの良いドライバーで、3年前に2週間、日本を旅したことがあるという。東京、京都、大阪、奈良、山間の旅館(おそらく飛騨高山)で温泉を楽しんだそうだ。
僕がプロヴァンスに滞在していた三日間の間に訪れた村や町の名前を挙げると、「おいおい、どうやって行ったんだ?」という感じで笑っていた。たしかに、超過密スケジュールで、恥ずかしい
また、プロヴァンスで受けたホスピタリティのクオリティの高さを褒めると、観光業に携わっている者はプロだから、それ以外の人はそれほど親切でもないよ、とご謙遜
食べ物の話題になり、フランス料理の美味しさを僕が絶賛すると「世界で食べ物が美味しい国は、フランス、イタリア、それと日本さお世辞というより「僕は日本の食べ物の美味しさを知っているぞ!」という自負を感じさせてくれたところがこれまた嬉しい。
彼の名前は"ジル"
とにかく親切で、感じが良く、ホテルへのお迎えも時間ピッタリに来てくれた。
彼自身が、観光業に携わる者のプロ意識を体現し、プロヴァンスでの最後の交流を本当に気持ち良く締めくくってくれた。
Merci Jill!Merci Provence!

IMG_1652日本の新幹線は、かなり大きな荷物も各席の上部に置けるが、TGVの網棚は物凄く小さいので、荷物は各車両の入口近くと中程にあるラッゲージ置き場に置くしかない。2つのスーツケースの内1つは通路、というか、客車の扉の向こう側に置くしかなかった。日本でもそんなところに置くのは不安なのに次の停車駅で移動させようと思っていたのだが、パリまでまったく停まらなかった。もしかして、僕が眠っている間に停まってた?

パリ(Paris)/アーノルド(Arnold)
IMG_1654パリ、リヨン駅に到着
タクシー乗り場には、長蛇の列ができていた
20分くらい並んで、ようやく次の次くらいで僕らの番という時に、突然、怒号が聞こえてきた
見ると、大きな体の黒人男性と華奢な白人(タクシー運転手)がののしり合っている。
いつ、どんなきっかけで始まったのかは分からないが、とにかく黒人が激高している
タクシー乗り場を仕切っていた別の黒人男性が仲裁に入り、結局、その黒人が別のタクシーに乗ることで、おさまったようだった。
そして、さっきまで大げんかをしていた白人タクシー運転手が、僕らを手招きして呼んだ。
『おいおい、お前のタクシーになんか乗りたくいよ』と思いながらも、順番的には僕らなので、仕方なく乗る事に
スーツケースをトランクに入れた後、行き先を尋ねてきたので、「ここに」と言ってホテルの名前と住所を書いたメモを渡した。
「分かった」と言って発車したと思ったら、さっきの黒人を乗せたタクシーが信号待ちしていた隣に横付けし、窓を開け、再びその黒人と言い争いを始めた
唖然
これがパリのご挨拶ってやつかBonjour

「英語は話せるかい?」と彼。
「ああ」と僕
「じゃ、後で説明する」
少し走って気持ちを落ち着けたところで、彼は説明を始めた。
「俺さ、黒人が嫌いなんだよ」
おいおい、それにうなずけってか?
「悪い奴が多くてさ」
彼の言い分はこうだった。
この辺りはタクシー強盗が多い。俺はあいつが乗り込もうとした時、直感的に『タクシー強盗だ!』と思ったんだ。だから、乗車拒否をしたのさ。すると、あの黒人、怒っちゃってさ。(当たり前!)とにかくこの辺りは強盗が多いんだ。北駅って知ってるか?あそこ辺りはもっと凄いんだぜ。

直感ねぇ...経験豊富な運転手ならともかく、見た感じそんなベテランではない。いや、ベテランどころか、まだまだ、新米って感じの若造だ。
「何年タクシー運転手をやってるんだい?」
「2年」
「これまで襲われたことはあるのかい?」
「1回ある」
「ほう」
「でも、怪我はしなかったよ、これで撃退したから」
と見せてくれたのが催涙スプレー。
でも、こんなものより、危険を察知する直感の方が大切なのだそうだ。
仕事柄、用心深くなるのは仕方がないのかもしれないが、人種差別はいかんだろう!
おっと、紹介し忘れていた、このタクシー運転手こそが、アーノルド
フランス語発音だと、僕にはとてもできないような発音だけど、外国人には英語発音の"Arnold"と言うのだそうだ。

IMG_1797パリ市内の道路は、考えられないくらい混んでいた。
若くてせっかちなアーノルドは、ちょっとでも早く進もうと、知る限りの裏道を駆使した。
iPhoneを取り出し、僕にマップを見せながら、
「いいかい、僕らはここにいる。けど、このままだと進まねぇ。だから、中洲(シテ島)に入るよ。こっちの方が早いから」
そう言うとハンドルを右に切り、シテ島に入り、ノートルダム寺院の裏を通って島の北側を走って、再び橋を渡り元の道の延長上に戻ってきた。なるほど、3分くらいは早く進んだかもしれない。
彼がiPhoneを見せて説明したのは、距離的には遠回りのルートだけど、時間的には早くなるということを前もって僕に伝えるためだったのだ。意外に細やかで、そしておそらく気が小さく、真面目なのだ。

「俺さ、空手を12年習ってたんだ」
「だったら、さぞかし強いだろう」と言うと、
「いや、そんなことはない。空手は実戦的には強くはなれないんだ。えっと、その…」
「精神的に強くなるんだね」
「そう!精神さ、精神を鍛えることこそが空手の...ああ....それなのに、俺って奴は、あんなことを…」
と、いきなり反省モードに突入
さっきまで笑顔で話していたのに、窓に頭を押し付け、「あー、俺は、なんてことを言っちまったんだ」と、先ほどの黒人との喧嘩を後悔し始めたのだ。
そんな風に反省した態度で窓の外を見ていたかと思ったら、やがて、その視線がミニクーパーに止まる。
「あの車、好きなんだよ。ミニクーパー、可愛いよなぁ」と見惚れている。「俺、あの車の黒に乗ってるんだ」

IMG_1655フランシーヌの場合はあまりにお馬鹿さん
という歌があるが
アーノルドの場合も、あまりにもお馬鹿さん

アーノルド、パリ生まれのパリ育ち。愛車はミニクーパーだけど、英国に行ったことはない。ぶっちゃけ、英国は好きではないようだ。ミニクーパーは好きだけど「それとこれとは別さ」。

「しかし、君は英語がしゃべれるからイイね。パリで英語がしゃべれば大丈夫だよ」
とアーノルド。
「ありがとう。でも、『フランス人は、英語がしゃべれても、しゃべってくれない』って聞いたんだけど、本当かい?」
と言うと、アーノルド、笑いながら、
「ああ、そうだね、ははは、そうだね、確かにそうだ。英語、しゃべんないかもね、あははは、確かに、確かに」。

アーノルド、イノセントなお馬鹿ちゃんなので「黒人が嫌い」だとか「英語、しゃべってんじゃねーよ、フランスでよ」といったフランス人の本音を次々と教えてくれる。他のフランス人がいたら「おいおい、それは言うなよ」と止めに入りそうな
アーノルド、不要に正直なだけで、根は悪い奴ではないようだ。おそらく、彼はこれまで自らの余計な発言や行動で、本来は関係のないトラブルに巻き込まれながら生きてきたんだと思う....
IMG_0058とてつもなく正直なので、ある意味、とてつもなく貴重な体験をしているのではないかと、僕は感じ始めた。
彼は色んなことを教えてくれた。
「タクシーを使うのは、フランス人より外国人の方が多いんだ。」
「今はとにかく中国人が激増している。」
「『コンニチハ』と話しかけて返事があれば日本人で、そうでなければ中国人さ。」
「韓国人は前歯が大きいんだ」とも言っていた。

そうこうしてる間に、ホテルの前の通りに入っていた。(ストリートビューでホテルのエントランスは確認している
「この辺だと思うんだけど」とアーノルド
「あ、今、通り過ぎたよ」と僕
「え?そうなの?だったら、ここに止めるよ」
パリに限らず、フランスの町中や村中の道路は、ほとんどが一方通行。なので、引き返せないし、もう一回戻るには、とてつもなく時間がかかる。
アーノルドは機転を利かし、その場で停車したかと思うと、すぐさまバックして脇道に入り、停車してくれた。
メーターは22ユーロ、これに荷物が2つあるので料金は24ユーロ、それにチップを含めた26ユーロを渡した。
するとアーノルド、
「これ多いよ」
「いいんだよ」
「あ、ああ、そういうことか、あ、ありがとう」

年齢は24歳くらいだろうか。
結構なハンサムさんなんだけど、いかんせん中身が子ども。
黒人への偏見は問題ありだが、正直さ、というか裏表のなさは一級品だった。
「ジキルとハイド」ではないが、同じタクシードライバーでも「ジル」と「アーノルド」、えらい違いだった

しかしながら、後になって気付いたんだけど、アーノルドがあの黒人を乗車拒否したのも一理あったのだ。というのも、あの激怒していた黒人、よくよく考えてみれば、列に並んでいなかったのだ。彼はタクシー乗り場と全然別のところからタクシーの列に入って行き、突然、アーノルドの車のドアを開け、乗り込もうとしたのだ。
アーノルドにしてみれば、駅から乗る大荷物を抱えたお客は安全なお客。駅のタクシー乗り場で順番待ちをするのは、あまり効率的ではないんだけど、安全を優先したいからあそこに並んでいたわけで、そこにどう見ても旅行者らしくない黒人が割り込んで乗ってきたので、乗車拒否をしたというわけだ。
アーノルドは、運転している間、同僚と電話で話して大笑いしたり、突然、黒人との喧嘩を思い出して反省したり、「俺、おしゃべり好きが好きなんだよ、でも、話せない客が多くてさ」と30分くらいの間に彼のキャラクターを存分に見せてくれた。
「俺さ、黒人が嫌いなんだよ」じゃなくて、「あいつ、割り込んできたから断ったら激怒しやがって」そう説明してくれれば良かったのに彼らのフランス語での言い争いなんか、僕らには理解できなかったんだから。
そんな嘘が言えないのが、アーノルドなのかもしれない。
帰国後一発目の9月27日のライブで発表した新曲は、このアーノルドのエピソードをもとに作りました

サン・ジェルマン・デュ・プレ(Saint-Germain-des-Pres)
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この日から3泊お世話になるホテルはアートス ホテル (Artus Hotel)。セーヌ左岸のサンジェルマンデュプレ界隈のど真ん中とも言えるような場所にあり、ルーブル美術館へも、オルセー美術館へも、ノートルダム寺院へも歩いて行ける。部屋の広さは今ひとつだけど、パリでは大きい方らしい。もちろん、無線LAN完備で、何気にiPhoneのポッド付きステレオがあったのが嬉しい。電源チャージできるので便利なのだちなにみ、星は4つとアヴィニョンのホテルより1つ落ちるけど、価格はこちらの方が上。都会だわ。

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とにかく立地が良くて気に入ったんだけど、唯一、バスタブがなかったのが残念。「バスタブがある部屋のキャンセルが出たら、いの一番でお知らせします!」とは言ってくれたものの、期待できまい。予約の時点でバスタブ有りを絶対条件にしておけば良かった。日本人のバスタブへのこだわりを彼らに理解してもらうのは難しいかと

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IMG_1678ホテルから歩いて3分くらいのところにパリで最も有名と言える老舗カフェCafe De Flore(カフェ・ド・フロール)やLes Duex Magots(カフェ・ドゥ・マゴ)がある。日頃から馴染みにしている客もいるのだろうけど、どちらかというとメインは観光客かも。
通りを挟んでフロールの斜め右の向かいにあるのがBrasserie Lipp(ブラッスリー・リップ)。1880年創業の老舗ブラッスリーで、文豪ヘミングウェイは原稿料が入れば必ず行っていたとか。(ちなみに「ブラッスリー」とは、軽い食事やお酒がのめるフランスの庶民的なレストラン、というかビヤホールというか、そういうものを指すらしい)。
そして、それらを見下ろす様にサンジェルマンデュプレ教会がそびえ立っている。セーヌ左岸に住む人々の心の故郷と言われ、さしずめ東京の下町で言えば浅草寺に当たるのかな?
後日、サンジェルマンデュプレ教会とカフェ・ド・フロールは訪れたが、ブラッスリー・リップには最後まで行かなかったので、いつかあそこで食事をしたいものだ。

後編へ続く...

waits2 at 19:37コメント(2)トラックバック(0)フランス旅行 | 旅行 

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コメント一覧

1. Posted by 「や」   2012年10月12日 20:27
こんばんは。歌の主人公「アーノルド」さん。どんな方か興味津々でしたが、期待を裏切らない凄い方ですね。丸本さんの人間観察力&表現力&引き出し力が素晴らしいと思いました。「お」さんがコメントされてましたが人間愛が感じられちょっと厄介な人も好感が持てます。あの「sammy」さんの歌もわたし的に今凄くジワジワ来ています。酔っぱらっただけなのに歌にして貰えて羨ましいなっ!と思ったり。実は私は高校まで吉祥寺にいたので「sammy」さんが寝たという東町郵便局は通学路で毎日通ってましたよ(笑)。だからなんか親近感が湧くみたいです。
2. Posted by Tatsuya   2012年10月13日 02:05
どうもです「や」さん!
いやー、お褒めていただいて、恐縮です(^^
そうですねぇ、自分で言うのもなんですが、観察力と引き出し力に関しては、結構自信があります!(笑)でも、表現力はまだまだです(^^
「sammy」を気に入っていただいているということで、嬉しい限りです!!
曲を書く時、最初は単なる酔っぱらいや、お馬鹿さんを描くつもりで始めるのですが、やがて彼らを通して見えてくる世界があるんです。曲を書いている間、自分はその世界に入り込んでいるようで、それをどのように表現するかに夢中になります。とても大変なのですが、とても楽しい時間でもあります。
彼らは実在する人物なので、その世界も虚の世界ではないと!そこが強みと感じています(^^
え!?通学路!?
それはそれは
いいですねぇ〜嬉しいですねぇ〜
なるほど、それは親近感が湧きますよね(^^
あ、そういえば、今月のライブは23日の火曜日ですが、11月のライブは21日の水曜日です!よろしければ、是非、是非いらしてください!!

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