2013年04月20日

「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」を読んで

IMG_0975「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」を読んで。
著者:村上春樹

まず第一の感想は、村上春樹の文章にしては、少し読み難い。
いつもより、リズムが悪いように感じたんだけど、気のせいか?
内容的には、最初は面白かったんだけど途中から失速

僕はよく間違った読み方をする。
字の読み方ではなく、間違った本の読み方をする。
僕が村上春樹の作品を読む時、登場人物たちに感情移入をすることはまずない。
正確に言えば、感情移入をすることができない。
だって、どうも好きになれない奴ばっかじゃない?
なので、主人公の視点からではなく、著者の頭の中を探りながら読んでいるようなところがある。
「そんなんで面白いの?」
はい
感情移入しなくても、彼が描く世界は、観念的には大いに楽しめる
その証拠にという訳ではないが、彼の作品は全部読んでいる(はず)。
全部読んではいるけど、マニアではない。
マニアではないけど、自分なりの彼の作品の楽しみ方は知ってるよ!という多少の自負はある感じ。
「これは凄い!」
と本気で思ったものもあれば、
「ん?これって途中放棄でしょ!」
と思われる作品もある
それを世間一般では、好意的な表現として「謎」と呼ぶ。
「謎」は、読者が想像を楽しむための余地と言えるかもしれないが、読者の想像力を凌駕するような結末や意味合いが思い付かなかったので放置したと思われるケースも多々ある。
ま、それはそれで構わない作品もあるのだが...
ビートルズ時代のジョージの作品に"While my guitar gently weeps"という曲がある。
この曲の3番のAメロの2回目だけ
I look at you all…
以降の3小節をジョージは歌わないで空白にしている。
そこに歌われるべき歌詞は存在するのか、当初から無しの演出なのか、
そこいらはジョージのみが知るところだが(おそらく後者だろうが)、
あそこを「歌わない」ことは、何とも言えない格好良さがある
他にもそんな曲がたくさんあると「またか」でしかないのだが、
ビートルズの他の曲で、意図的にそうしている曲は、この曲以外にはない(はず)。
描かないという演出は、あんまり多いと「またか」でしかないんよね...

さて、本書は、主人公の多崎つくると4人の友人たちにまつわる物語の体をとっているが、著者が本当に書かねばならなかったのは、主人公と父(著者と父)だと僕は勝手に思っている。(この辺が僕の間違った読み方)
重松清ならど直球で書くのだろうけど、村上春樹にそんなことはできない。
というか、それをしては村上春樹ではなくなるので、この体をとっている。
ただ、残念なことに、覚悟が中途半端だったので、甘くなってしまったかと

幸い、僕個人は、何年か前に巡礼をやり遂げることができた。
もしもあの巡礼をやり遂げていなかったら、僕は一生後悔し続けているに違いない。
なので、本書を僕が30代前半よりも前に読んでいたら、かなりクル作品だったろう。
もしかすると、僕の背中を押してくれる作品になっていたかもしれない。
しかし、今の自分には何もこなかった。
だって、分かるんだもん。
著者本人が、巡礼をやりきっていないことが

村上春樹の作品において、登場人物たちは記号でしかないことは分かっている。
しかし、小説という形式をとっている以上、その登場人物の特徴を伝えるのに、外見的なことはともかく、その他のことは「説明」するのではなく、その登場人物の行動を描写することで、読者にその人物を推察・判断する機会を与えてもらえないだろうか。(今更?)
「こいつ意外に良いとこあるじゃんか」と読者が思えるようなシーンが描かれていれば、他の登場人物が彼を誤解しているような発言があったりすると、読者は「分かってないなぁもう!」と感情移入し易くなる...(やっぱ感情移入したいのか?
もちろん、全体をそうしろとは言わない。
1つで良いのだ。流れの中で登場人物の人柄を察せられるような、説明でない、描写、エピソード。

エピソードといえば、本作で一番興味深かったのは「緑川」のエピソード。
あっちの方を掘り下げた方が面白い展開がありそうな気がした。
でも、書いている途中で、「今回はやめとこう」(もったいない?)と判断したと思われる。
これは謎というより、スピンオフの種っぽい。
そういう意味では楽しみ。

さて、巡礼について、なんと言うか、エベレストに登ったことがない者からエベレスト登頂の感想をうかがっているような感覚があった。
でも、小説家なら、登ったことがなくても、登ったことがある者より説得力を持つ、臨場感のある話をして欲しいところ。
登頂に挑む必要性とか、本物の登山家よりも上手く、また魅力的に語れないといけんでしょう!
巡礼は、周りの人からの大きな支援があって成立する。
動機から何から、周りの方々の「お陰」だ。
作品中では、沙羅が後押しをしてくれた。
主人公は、最後、「沙羅を手に入れなくては」と強く思っていたが、沙羅は、どんなに感謝しても感謝しきれない存在であって、手に入れらるかどうかは問題ではない。(この辺が著者の想像上の巡礼である証拠)
巡礼は、巡礼に旅立つ決心をすること自体がゴールと言っても過言ではない。
「それ」と正面から対峙する「覚悟」こそがゴールなのだ。
そこにどんな謎があろうと、もはや関係ない。
そして、巡礼後に、新たな成長が始まる。
助けられっぱなしじゃいけんでしょう。
が、主人公の意識の変化のなさに愕然。
そこいらをどんな風に描くのかを期待していたのに...(やはり巡礼していない)

たしか「ノルウェーの森」の中に「自分に同情するな」といった台詞があった。
しかし、どうも春樹の作品には、自分に同情しがちな主人公が多過ぎる。
「それじゃいかん」と分かっていながら自分に同情しがちな日本人が多いのかな?
「自分は正当な評価がされていない」という思いの人が多いのかな?
だから売れるんかな?
うーーむ...
こんな不満たらたらの自分に、少々、驚いている。
でも、これはそれだけ期待していたからとご容赦くださいm(_ _)m
僕よりも後に読んだ妻は、僕の落胆振りを先に聞いていたせいか、「言うほど悪くなかったじゃない。ちゃんと読ませたよ」と「並」の評価。
やはり、期待値で評価はかなり変わるね

最後に、もしも、このタイプの作品をまた書くのであれば:
主人公以外は自分に同情ばかりする頭の良い連中で構わないから、本当の大人になることを心から覚悟して取り組む、頭は良くないけど、また、異性にももてないけど、いじらしい主人公を、描いてみて欲しいなぁ、春樹ワールドで。

先述したように、僕はよく間違った読み方をする。

あ、そうそう!オルガさんは良かった

waits2 at 10:50コメント(0)トラックバック(0)  

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