2014年04月06日

「あなたを抱きしめる日まで」と「LIFE!」

映画「あなたを抱きしめる日まで」を観た。
IMG_3173原題:Philomena(フィロミナ)
監督:ロビー・ライアン
脚本:スティーヴ・クーガン
主演:ジュディ・デンチ
以前から、観たい、観たいと思っていたのだが、昨日、ようやく観ることができた。
素晴らしい映画だった!
ここ最近観た中で、間違いなく一番良かった
暗く、辛い内容の話なのに、絶妙の演出で、悲しいだけじゃない、微笑ましいシーンも、ジーンとくるシーンもちゃんとある、バランスの良い作品に仕上げられていた。
さて、さて、何から褒めようか.....「うーん」と迷うことはない主演のジュディ・ディンチの演技がとにかく素晴らしかった
ど派手なシーンがあったわけじゃないのに、最初から「凄い」と感じさせられた。
いわゆる存在感がある女優だとは思うのだが、今回彼女が演じた女性は、凄い女性ではなく、普通の愛らしいおばさん、というかお婆さんなので、かえって存在感は不要。
なので、出してはいない。
そう、出してはいないのに、主人公の心情が、恐ろしいくらいに伝わってくる。
監督の「アクション!」という掛け声で、彼女の表情がガラリと変わり、現場の空気が一変する、そんな様子が容易に想像できた。

これから観る方もいらっしゃるかもしれないので、ネタバレにならない程度に紹介したいと思うのだが、まず、本作は、実話に基づいた話だということ。
「事実は小説より奇なり」という言葉があるが、まさにその通りで、思いも寄らぬ展開があるのだが、事実だけに説得力がある。
ただ、原作がどんなに劇的な実話であったとしても、面白い映画が出来るとは限らない。
ドキュメンタリータッチでいくのか、ヒューマンドラマとして描くのか、アプローチによって印象は全然異なるし、誰を主人公にするのか、誰目線で描くかでも、全然変わってくる。
この辺は、脚本家や監督のセンスと力量にかかってくるわけだが、本来とてもシリアスで、社会的に大きな問題を扱っているだけに、描き方によってはひたすら重いだけの作品になってしまう可能性も十分にある。
というか、最初、自分もある程度そのつもりで観ていた。
なので、主演のジュディ・ディンチに比べ、彼女と道中を共にするジャーナリストのマーティン役を演じたスティーブ・クーガンが、『あれ?どうした?』と思ってしまうくらい、役者としては三流の演技だったので少し不思議に感じていた。
実は、このスティーブ・クーガン、本作のプロデューサーであり、脚本家でもあるのだが、本職はコメディアンであることを後でプログラムを読んで知り、合点がいった。
あの少し残念な演技は、全体的な印象を重くなり過ぎなくするための配慮だったのだ。
IMG_3177**ストーリー(ネタバレはありませぬ)**
ジュディ・ディンチ演じる主人公フィロミナには、50年間隠し続けてきた秘密があった。
10代の頃、未婚のまま妊娠した彼女は家を追い出され、修道院に入れられる。そこには同じような境遇の女性たちが「堕落した女」として、出産の面倒を見てもらう代わりに、過酷な労働を強いられていた。フィロミナは男の子(アンソニー)を出産したが、修道院で子どもと一緒に過せる時間は1日わずか1時間しか与えられなかった。アンソニーが3歳になったある日、修道院は金銭と引き換えに養子に出し、以来、アンソニーの消息は不明となった。
フィロミナの告白を受けた娘のジェーンは、『愛する息子に一目会いたい』という母の願いを叶えるため、元BBCのジャーナリストであるマーティンに話しを持ちかける....
****
僕も本作を観る前、上記程度の予備知識は持っていた。
登場人物たちのキャラクターを一通り理解したところで、いざ、息子を捜す旅が始まるわけだが、そこから先は、あっという間にストーリーの中に引き込まれていく...
個人的には、アイルランドがらみの映画ということもあったので観たいと思っていたのだが、そういうことに関係なく、誰でも楽しめる作品になっていた
(ちなみに、本作で"Slainte"という言葉を2回ほど聞ける"Slainte"とは、「乾杯」という意味のゲール語だが、この発音について、僕は「スランチェ」と表記するようにしているが、「スロンチャ」と表記されているのもいくつかのサイトで見たことがある。今回、映画の中で聞いた発音は、「ロ」よりもやはり「ラ」に近いと感じたのだが、それよりも後半の「チェ」が「チョ」に近いと感じた映画とは一切関係ない話題で恐縮です^^)
本作は、カトリックに関わる映画だが、宗教に限らず、組織って大きくなればなるほど、怖いんよね。間違ったことを平気でしたり、また、間違ったことをした後も平気でいられたり...
本作のメインテーマというわけではないが、それを強く感じたので、書き留めておいた。

さて、ついでにと言ってはなんだが、3月16日(だったかな?)に観た映画「LIFE」の感想も少し。
IMG_0758邦題:LIFE!
原題: The Secret Life of Walter Mitty
監督:ベン・スティラー
主演:ベン・スティラー
助演:ショーン・ペン
プログラムを読むまで知らなかったのだが、本作には原作があり、また、映画としてもリメイクだった。
原作は「虹をつかむ男」(1939年)(同タイトルの邦画があるがそれとは関係ない)。映画化されたのは1947年で、主演はダニー・ケイ。
「ほう、それなら知ってるし、もしかすると観たことがあるかもしれない?」と思ったが、覚えてはいない。
原作があり、また、一度映画化されたことがあるものの、本作の物語は原作ともオリジナル映画ともまったく異なると言う。
「は?だったら原作って何なんだ?」
そう言いたくなるのもごもっとも。
何しろ原作はわずか12ページの短編だったらしいので、映画化の際、かなり盛られたようだ。
IMG_5799おそらく、空想癖のある冴えない男が主人公で、名前がウォルター・ミティとくれば、米国内の一定世代以上の方々の間では『あのシリーズね』と言う認識があるようだ。
と言うのも、かつて、米国では空想癖がある人を見かけると、「彼はウォルター・ミティだから」と言われるくらい主人公の名前とキャラクターが浸透していたらしい。
なるほど、となると、原作がどうとかもはや関係ないわけね。
空想癖といえばアイルランド人のお家芸なので、原作の「虹をつかむ」(The Middle Aged Man on the Flying Trapeze and More)の著者ジェームズ・サーバー(James Thurber)はアイルランド系なのかな?と調べてみたのだが、それらしき情報は得られなかった。
が、本作の中で、ウォルター・ミティが血眼になって探す幻のフォトグラファーがいるのだが、彼の名が、「ショーン・オコンネル」と、どアイリッシュネームだったので、少なくとも製作者の中にアイルランド系の方がいるのは間違いないかと
製作者と言えば、本作の製作を務めたジョン・ゴールドウィンとサミュエル・ゴールドウィン.Jrは、1947年の「虹を掴む男」を製作したサミュエル・ゴールドウィンの孫と息子らしい。
なので、本作は、主演・監督を務めたベン・スティラーの映画のようで、実は、ゴールドウィン一家の作品という方が正しいのかもしれない。ちなみに、サミュエル・ゴールドウィンはポーランド出身でアイルランド系ではない。
と言うことで、どういった内容の話しだったかより、設定や背景の方が興味深かったので、そちらを記しておいた。
本作は、色んなところを訪れ、奇想天外なことが起こるアドヴェンチャー映画?かもしれないが、正直、昨日観た「あなたを抱きしめる日まで」の方が、遥かに先を知りたい気持ちを強く抱いた。
興行的には「LIFE!」の方が上だと思われるけど、心の振られ幅は、断然「あなたを抱きしめる日まで」の方が遥かに広かった。

waits2 at 22:26コメント(0)トラックバック(0)映画  

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